ある人にとっての黄金時代はレンタル店の棚が広かった頃であり、別の人にはDVDと専門誌がスターを育てた頃、あるいはSNSと海外イベントで名前が国境を越えた現在かもしれません。一つの年を頂点として固定するより、複数の隆盛がどの媒体、流通、人物、観客によって生まれたかを見る方が、業界の変化を立体的に捉えられます。
レンタル期には店舗の棚と雑誌広告、DVD期にはセル市場と専門誌、配信期には検索と定額サービス、SNS期には本人発信と海外イベントが発見の入口になりました。売上、店舗数、作品本数、検索量、イベント来場者は、それぞれ別の現象を測る数字です。異なる指標を一つの人気曲線へまとめると、各時代に人物が知られた経路を見落とします。
媒体のピークと、文化のピークは同じではない
日本映像ソフト協会の長期統計では、一般映像市場でビデオカセットからDVD、Blu-rayへ媒体が移った過程を確認できます。ただし、その売上推移だけで成人向け文化の盛衰を断定することはできません。
店舗、雑誌、メーカー、女優、イベントのどこを中心に見るかで、活気の感じ方は変わります。数字は時代を測る一つの窓であって、時代そのものではありません。
スターの時代は、記録の残り方でも変わる
1991年から96年の女優42人へのインタビューを収めた書籍が国立国会図書館に残るように、当時の人物像は長い聞き書きからも立ち上がります。現在は本人のSNSや動画が日々の言葉を残します。
紙の編集を通った長い聞き書きと、本人が直接発する短い投稿では、残る言葉の密度と文脈が異なります。記録媒体が変われば、スターとの距離だけでなく、発言が保存され、切り取られ、再発見される方法も変わります。
懐かしさを、現在への否定にしない
過去を黄金と呼ぶとき、現在を衰退と決めつけやすくなります。しかし配信、海外イベント、個人発信が生んだ新しい仕事と観客もあります。
業界史は売上や有名人だけを並べた勝者の年表ではありません。消えた店舗、残った写真、変わった契約、続く名前を並べると、時代ごとに何が可能になり、反対に何が見えにくくなったのかが分かります。失われた流通や場所も、文化を形づくった要素です。
